「これはイヤ! あれもダメ!」
なんにでも反対してママやパパを手こずらせる、子どものイヤイヤ期。
「どう乗り越えたらいいのでしょう?」というご質問を毎年かならず、パパやママからいただきます。
冷静に受け止められるか、うるさいなぁ、とやり過ごしてしまうか。
実は、このイヤイヤ期は親が試されている通過儀礼といってよいかもしれません。
親子ともども、この時期をどう乗り越えるか。その後の子どもの成長にも大きく関わってくるため、私たち大人にも覚悟が求められるというわけです。
マリア・モンテッソーリは子どもの発達には4つの危機があると説いています。その危機とは「誕生の危機」、「離乳の危機」「人見知りの危機」「自我の確立の危機」ですが、ここではイヤイヤ期にあたる「自我の確立の危機」についてお話ししていきます。
その前に、皆さんは危機という言葉にどんなイメージを抱きますか?
産後クライシス、中年クライシスという言葉もあるくらいですから、デリケートで厄介で、ややもすれば否定的な印象をお持ちなのではないでしょうか。
まずは、この先入観をどうか払拭なさってください。
モンテッソーリが説く「発達の危機」とはいのちから届いた特別な贈りものなのです。それは、生命が進化するための必要ないい意味での変化であり、チャンス。
イヤイヤ期は子どもが自分の存在を確認するための、大事な変化のとき。
その時こそ、原点に立ち帰りましょう。原点とは、子どもを尊重すること。
子どもに大人の判断をおしつけないこと。子どもの領域を尊重すること。
その上で、子ども達が能動的に選ぶことのできる、選択肢を与えて欲しいのです。
ついうっかり、こんな過ちをしていませんか?
◎レイヤーの異なる選択肢を与えてしまう。
たとえば、「お風呂にする?」「ごはんにする?」
これはパパに尋ねるのはいいですが、子どもは困ってしまいます。
比べようがないから「どっちもイヤ!」という答えが返ってくる。
せめて「スパゲティにする?」それとも「ごはんにする?」と聞いてあげてください。自分がどちらの気分なのか、考え選ぶのを待ってあげてください。
選ぶことは考えること。これこそが、その子の思考をうながすための、貴重な機会です。
◎選ばせておいて、子どもの選択を親の都合で覆す。
これは、いちばんやってはいけないことです。
たとえば。「今日は動物園に行く?」「おばあちゃんちに行く?」
子どもが「動物園!」と答えた後で、「やっぱりおばあちゃんのうちに行こう」では、子どもを尊重していない証拠。
知らず知らずのうちに、子どもの尊厳を傷つけてしまいます。
イヤイヤ期は親にとっても、心の引き出しを増やすチャンスと心得て、余裕をもって臨んでいただきたいものですね。