夏休みの心得3:手のかからない子は「いい子」ですか?
8月 03

夏休みの心得3:手のかからない子は「いい子」ですか?

 いのちを燃やすように蝉が鳴いています。暑い日が続きますが、楽しい夏休みをお過ごしですか?

 幼稚園がお休みだと、毎日が子ども中心の日常になりますね。三度三度のお食事づくりに悲鳴を上げている方も多いことでしょう。
しかも子どもは大人の都合に合わせてくれません。世話がやける、手がかかる、面倒が増える。そんな大人目線で考えてしまいますと、手のかからない子こそが「いい子」になってしまいます。

「うちの子は小さい頃から手のかからない、いい子でした」
 K君のお父様お母様に初めてお会いした時、開口一番そう仰いました。「乳児期の頃から滅多に泣かない子でした。たとえ、目が覚めてしくしく泣いたとしても、知らない間に眠っていました。その後も本を読んであげれば静かでしたので」と。

 幼稚園でK君を日ごろ観察していますと、お母様の読み聞かせのおかげでしょうか、確かに文字を書くのも早かったです。物の名称を覚えるのも得意で5歳になると誰よりも早く世界の国々の名前を覚え、自分だけの世界地図を早々に完成させるほどでした。一方で、お仕事中に机の上から音を立てて物を落とす、心と体のバランスが上手にとれていない場面が目立ちました。
 また目に涙をいっぱいためて「胸が痛い」「歯がぐらぐらする」という大人への呼びかけがしばしばあることも気になりました。

 確かにおりこうさんでいい子ですが、どこか、うつろなのです。
 「K君はきっと、外胚葉優勢型だな」私はそう直観しました。

 医師であったマリア・モンテソーリは「人間の素(もと)」は受精からわずか15日間でつくられる細胞のタイプによって3つに分類される、と説いています。

 その3つは外胚葉、中胚葉、内胚葉と呼ばれ、それぞれ役割を持ち、身体の組織と体質的類型を形作っていきます。3つの胚芽層のどこに優位性が現れるか。その特徴を決定するものが着床時のコンデションなのか、タイミングなのかは定かではありませんが、モンテッソーリがこの3つの体質的類型が子どものその後の身体的発達や人格の傾向性を知る手がかりとしたことはたいへん興味深いと感じます。

 たとえば、外胚葉優勢型の子どもは痩せ型が多く、少食で疲れやすいため、長い睡眠時間が必要です。食事にも時間がかかります。泣き続けるエネルギーがないので、大人が反応しないとすぐにあきらめてしまいます。

 中胚葉優勢型の子どもは筋肉質でがっちりしており、泣き声が大きく、要求も強いのでいつまでも泣き続けます。体を動かすことが大好きで、静かに座っているのが苦手です。自由に動き、運動する機会を与え、正しい方向に導けば、たくましく疲れ知らずです。抑制すると大きな障害が生じる可能性もあります。

 内胚葉優勢型の子どもはぽっちゃりとした体つきで、大人に好かれやすい子どもです。社交的で人気者ですが、周囲の反応に影響されやすく、間違った習慣が身につきがちです。よく食べてよく寝ますが、食べ過ぎに注意が必要です。丈夫なぶん、太りやすいので自転車や縄跳びなど活動時間を増やしてあげると健やかに育ちます。

 同じ親から生まれたのに、兄弟で全く性質が違うということはよく聞きますよね。親子でも違いますし、一卵性双生児でも全く同じではありません。その子の傾向性を知って、外胚葉タイプなら少量でも栄養の高いものを食べさせるとか、内胚葉タイプなら、一回の食事の量を減らし、なるべくカロリーの低いものを食べさせるようにするなど、私たちも活用できそうですね。

 さて。話をK君に戻しましょう。ある日私はK君のお父様とお母様にこの話をして、K君の発達段階でできた「空白の時間」について一緒に考える機会を持ちました。身体の不調を訴えるのは大人の関心を惹きたい心の現われであることをまず、伝えました。その上で手がかからないのではなく、大人の反応がないから、あきらめてしまった。その繰り返しでK君の胸にぽっかりあいた穴を埋めるにはいまこそ、ご両親がK君にしっかりと関心と愛情を向けてあげてくださいとお話しました。

 またよく物を落とすのは手と心と体のバランス、運動の調整をこれまでの環境において作り込むことができなかった現れですから、お家でいっしょに縄跳びをするなど、体を使うことを推奨しました。

 ご両親はこの3つの体質的類型に大変興味を示され、夏休みを存分に活用されました。縄跳びやマラソンを日課にし、K君と一緒に楽しみました。そしてK君の話をよく聞き、会話の時間を増やすよう心がけたそうです。

 その後、K君は大変身しました。お父様、お母様のご協力あっての変化です。もともと本好きでしたが、本から得た知識を自分の言葉で語り、いまでは年上のお兄さんお姉さんたちとディスカッションができるまでになりました。健やかな体づくりのおかげで、涙ながらの訴えもなくなりました。

 子どもに手がかかる。それは、かけがえのない時間です。
子どもをよく見て、子どもの心と体の声をよく聞いてください。
 親子がいっしょに成長していく。それは、尊い体験です。
素晴らしい夏休みでありますように! 

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あああ
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