お見送りで、子どもに泣かれると罪悪感にさいなまれる。
そんなパパやママが少なくないでしょう? 毎回、後ろ髪ひかれる思いで
「私がいなくなったら、うちの子は一体いつまで泣き続けるんだろう?」
そう思うのではありませんか。
実は、ひとしきり泣いて気がすむと、子ども達は案外、すぐにケロッとしているものですよ。お教室に入って「お仕事」をはじめてしまえば、何かを思い出したように目を輝かせて集中し始めます。
ある日のことです。いつまでも泣き止まず、パパに抱きついて、かたくなに離れない女の子がいました。
「かえりたい かえりたい おうちにかえりたい!」
お見送りにきたパパはお仕事にいかなければならないので、困り顔です。
私は言いました。
「お父さん、お仕事におでかけくださって、大丈夫ですよ」
お父さんが手を放すと、女の子は火がついたようにふたたび泣き出しました。
手を振りながら、去っていくパパを横目に、今生の別れとばかりに大泣きです。パパの姿が見えなくなっても、頬を伝う涙はとまりません。そこで私は
「えらいわね。今日のあなたは特別にえらかったから、先生が涙を拭いてあげるわね」鞄の中からハンドタオルをとりだし、女の子の涙と汗をぬぐってあげました。上履きに履き替かえるころには、もういつもの顔に戻っていました。
子ども達はいつまでも泣いたりはしないのです。その現実を知って、
もしかしたら、がっかりしたパパがいるかもしれませんね。
残念ながら、子ども達がぐずり続けるのは、泣きさえすれば、いつまでもパパが抱っこしてくれることを知っているからなんです。
最近はパパのお見送りやお迎えも増えました。お父さんの育児参加は大変、喜ばしいことです。とはいえ、働き盛りのパパ達が子どもといっしょにいる時間はまだまだ限られているようです。さきほどの女の子の様子を見れば、わかります。
パパと一緒にいる時間が少ないから、パパから離れようとしない。
パパのほうでも、たまに一緒にいるから、つい甘やかしてしまう。
おのずから家庭内の子育ての役割が「ママは厳しく、パパは優しく」なってしまう。その結果、過度なパパっ子が増えているようにお見受けします。
『星の王子さま』を書いたサン・テグジュペリがこんな言葉を遺しているのをご存知ですか。
「愛とはそれはお互いを見つめ合うことではなく、いっしょに同じ方向を見つめることである」
パパとママが愛情いっぱいに子どもをみつめることは大事です。
でもその温度感に差があると、子どもは混乱してしまいます。パパとママが同じ方向をみつめながら、子どもをみつめることが重要なのです。
「北斗七星」のように、ふりかえれば、いつでもそこにいる。そんな、パパとママ共有の子育て指針を持つことがすごくたいせつなんですね。
パパとママがともに指をさすことのできる「北斗七星」がある家庭の子どもは安定します。帰るべき恒星があってはじめて、子どもは安心して自立できるからです。
今週末、パパとママでじっくり話し合ってはいかがでしょうか。
ワインでも飲みながら、ふたりでみつめあって、ゆっくりと子どものことを語り合う。きっと話が尽きることのない、最高の時間になるはずですよ。
それでは、よい週末を。