「ようこそ、横浜モンテッソーリ幼稚園へ!」と新しいお友達をお迎えした4月。まるで昨日のことのように思い出されます。もうすっかり夏の気配を感じる、今日この頃ですが、みなさん、新しい環境に慣れましたか。
はじめて園の門をくぐった、新しいお友達(年少さん)。
「ここはどこだろう」「おにいちゃん、おねえちゃんはなにをしているんだろう」
「これはなんだろう」「ぼくもやってみたいな」「わたしにもできるかな」
ひとたび教室に入れば、子ども達は目をキラキラと輝かせ、目の前で繰り広げられるすべてのことを、その小さな体で受け止め、吸収していきます。
おにいさんやおねえさん(年中さん、年長さん)のおしごとをじっーっとみつめ続ける子。「ぼくもやってみたい」と手をのばす子。かと思えば、おもむろに立ち上がり、教室の隅々までパトロールしながら歩きまわる子。
どれも子ども達の自然な姿です。もちろん、好奇心と同じくらい、慣れない環境へのとまどいもあるでしょう。
ママのことを思い出したのか、急に泣きべそをかく子。「せんせい、みて。せんせい、これ、みて」と始終注目をひきたがる子。おねえさんがはめこみ円柱をやってみせてくれている途中で飽きしまって、別のおにいさんが鉄版で円を描いている最中に、ちょっかいをだしはじめる子。実にさまざまです。
こんなことがありました。
バケツで水汲みをしているお兄さんに「ぼくも!」と近寄ったTくん(3歳)。
やってみたいという気持ちはあふれんばかりでしたが、小さなTくんにとって、そのバケツはまだちょっと大きすぎました。でも「やってみたい」。
まずは、この気持ちを尊重することがたいせつです。黙って見守ります。
お兄さんの真似をして、いざ、水の入ったバケツを持ってはみたけれど、すぐに勢いよくバケツをひっくり返してしまいました。水はみるみるうちに床いっぱいにひろがっていきます。
呆然と立ちすくむTくん。つぎの瞬間、何が起きたと思いますか?
まわりにいたお兄さん、お姉さんがおもむろに立ち上がり、「だいじょうぶ」とTくんに声をかけたかと思うと、つぎの瞬間、みんなでいっせいに雑巾をつかみ、「たいへん たいへん でも こうすれば へいっちゃら」と雑巾で床にこぼれた水を拭っていくではありませんか。なんと頼もしい、レスキュー隊でしょうか!
「へいっちゃら」「へいちゃら」ということばの響きが面白かったのか、水をひっくり返したTくんも、にこにこしながら、雑巾をつかみ、みようみまねでお兄さんお姉さんたちのおてつだいをはじめました。
ほどなく、こぼれた水はきれいに拭き取られました。そればかりか、子どもたちは手を動かしているうちに水拭きが楽しくなってきたのでしょう。一生懸命磨き上げてくれたので、床は前よりピカピカです。
「きれいになって よかったね」
おしごとがおわった後、互いに讃えあう子ども達。その表情は床よりもピカピカに輝いていました。まさに縦割り教室の素晴しさを伝える一コマです。
バケツの水がこぼれた時、大人なら、どうするでしょう。つい叱ってしまいそうですが、子ども達はそうではありません。Tくんを助けたいと率先して行動します。その思いやりにふれ、Tくんは「僕もお兄ちゃんお姉ちゃんのようになりたい」と思ったことでしょう。年中さん、年長さんはおそらく、「お役に立ててうれしい」と、とってもいい気持ちがしたことでしょう。
マリア・モンテッソーリは説いています。
「子ども達は大人が思う以上に、子どもの動きをよくみている」
ほんとうに、その通りだと思います。