マリア・モンテッソーリの直弟子であったアントニエッタ・パオリーニ女史、マーゴR.ワルタック女史。『いのちのひみつ』の著書でもある、シルバーナ・Qモンタナーロ女史、そしてマリア・モンテッソーリのご子息、マリオ・モンテッソーリ氏。
いずれもモンテッソーリ協会の重鎮と呼ばれる方々ですが、はじめて会ったときから、昔からよく知っているような、懐かしい感じがしてはじめてという気がしませんでした。
8人兄弟で育ったせいか、最初から「弟」という気分で、しばらくぶりにお兄さんやお姉さんに会ったような気持ちがしたものでした。いわば、国境を感じさせない心の交流でした。
それは私達が 「子ども達のために」。この使命感でむすばれていたことも大きかったでしょう。とは、いうものの。
横浜モンテッソーリ幼稚園の前身となる、町田の保育園に、はじめてマーゴ夫妻が訪問されたときは、正直、ちょっと怖かった(笑)。
「How many children ?」
「How many classes?」
「How many teachers?」
……という具合に、まるで検査官(Inspector)のような質問が続きましたからです。
ほどなく、「子ども達を見に行きましょう」と教室へ誘導する僕を見たマーゴ女史がこう言いました。
「You Walk very nice!」(歩き方がとっても上手!)
意外にもこんなふうに褒められて、こちらの緊張がほどけたこともあり、それ以降の質問が、だいぶやわらかくなったことをおぼえています。「これでよかったんだ」と安心してすごく気が楽になったのかもしれません。そこからは和やかな会話が続きました。
そのおかげで、後日「モンテッソーリ」の冠を幼稚園の名称につけてもいいですよ、というお墨付きのお手紙が届き、現在に至ります。
「You Walk very nice!」 何気ない一言ですが、実はこれは「全部見ていたのだな」ということ。歩き方の所作だけでなく、ガイドをする間、手振り、身振り、話し方。頭のてっぺんから足の先に至るまで、全部です。
「これはすごいな。裸を見られているみたいだ」と思ったくらいです。
戦争が終わって「これからは英語を勉強しなくては」とNHKのラジオ講座で英語を独学していたことも合格へと導いてくれた大きなポイントだったかもしれません。
それでもやはり、「子ども達のために」という使命感が遙かに上回っていました。
それが伝わったのでしょうか。以後、彼らは何度もこの横浜モンテッソーリ幼稚園を訪ねてくださいました。
私達の交流はいつも、言葉や国境を越えた「兄弟・姉妹」のように温かいものでした。